扁桃核ブログ

倫理問題に関する私見を述べるブログです。

無倫理主義の採否決定要因(1)

 無倫理主義は倫理的強者よりも倫理的弱者の間にまず普及するでしょう。倫理的弱者の方が、以前の記事で述べたような無倫理主義の効用に魅力を感じることが多いと思われるからです。

 

しかし、無倫理主義が認知されていくにつれて、その採用が倫理的強弱のいずれかと結びつく傾向は弱まっていくでしょう。なぜならば、ある者が倫理的に強者であるか弱者であるかは場合によって異なるので、同一人物がある時は強者であり別のある時は弱者であったり、ある面では強者であると同時に別のある面では弱者であったりするのが一般的だからです。倫理的強弱がこのように流動的であると、無倫理主義を採用することによって得る利益と蒙る損害のどちらが大きいかは判別しにくいため、利害得失は無倫理主義の採否を決める要因とはならないことが多いでしょう。

 

よって、無倫理主義の普及当初に、自身が倫理的弱者であることが要因となって無倫理主義を採用した者の中にも、無倫理主義の採用によって受ける損害が具現するにつれて、無倫理主義を放棄する者が現れてくるものと思われます。

 

もっとも、利害得失が無倫理主義の採否を決定する要因となることが完全になくなることはないでしょう。無倫理主義の採用による利益が損害よりも大きいことが明らかである場合には、そのことが無倫理主義の最大の魅力となることは十分あり得ます。この場合、やはり倫理的弱者の方が利益を受けることが多いでしょうが、倫理的強者が利益を受けることもないわけではありません。倫理的強者であることに負い目を感じている者も、無倫理主義の採用による利益を受けるでしょう。

 

 とはいえ、やはり先述したように、基本的には無倫理主義の普及につれて、その採否を利害得失によって決めることは少なくなっていくでしょう。ほかに無倫理主義の採否を決める要因となるものとして私が今思い浮かぶのは、無倫理主義の採用による利害得失を①とすると、以下のようなものです。

 

②無倫理主義に対して抱く自己または他者の感想。

③無倫理主義の内容の信憑性。

 

 次回はこれらの内容について解説していきます。

 

編集記録1:2020年3月30日、文中の語句のリンク先URLを現在のものに修正しました。

編集記録2:2021年3月9日、本文中最後の一文の文字の大きさを修正しました。

編集記録3:2023年10月3日、「#無倫理主義」のハッシュタグを付け、編集記録の書式を改めました。